ぴのこのにっきそのに


車が故障したというのに少女は上機嫌であった。
グリーン車を予約したりと大変であるのに、おいしい駅弁を探さないと、と携帯電話とにらめっこだ。
荷物は全部宅急便で送り、だいぶ身軽になって座席に座る。
少女の選んだ駅弁を頬張り窓の外を眺める。
ふと見れば少女は夢の中だ。
彼女の頭を膝の上にのせる







夕方からと言うので、傘を持たずに出たのが不味かった。
暗い色の雲から大粒の滴が降り注ぐのをみて少女はため息を吐く。
降水確率が50%を超える時は傘を持ち歩けと言う天才外科医の怖い顔が脳裏に浮かぶ。
ふと漂う甘い香りに少女は振り返った。
それはたい焼きの屋台。
途端に笑顔が毀れる三時の雨宿り







1月の終わりごろから、急に街やお店はハートで溢れる。
 それは、来る2月のイベント商戦のはじまり。
 特設売り場も当たり前の、チョコレート。色々な種類、色々なラッピングに、女子なら心が躍る楽しいイベント。
 眺めるのは好き。
 でも、これを購入しても、当日に食べてもらえることがほとんどない、少女は静かにため息を吐く。
 いや、いつもの事だから。
 それでも。 「ちぇんちぇいだったら、おちゃけいりのが好きらしねー」
 気を取り直して、チョコレートを選ぶ。
 数日遅れでも、イベントを外すわけにはいかないのだ!

 そして、当日、毎年チョコレートケーキに挑戦する。
 今年はスチームチョコケーキ。
 ネットで上級者用というレベルでレシピが公開されていたもの。
 結構な手間だけど、そこがいい。
 今日も元気に頑張ります!

 そして、完成品を今年はユリさんと食べている。
 ドクターキリコも、海外出張でいないらしい。
「もーこんなひにしゅっちょーらんて、もったいなー」
「本当ね」
 二人でくすくす笑いながら、チョコレートケーキを食べる。
 ユリさんは、ブラウニーを。
 兄さんは、これが好きなのって、笑いながら教えてくれた。

 ぴんぽーん。
 玄関のドアベルが鳴る。宅配便だった。
 送り主は、びっくりなことに、先生から。
 中身は、チョコレート。
 イタリア出張のお土産なのか”Baci”というチョコレート。

「めずらしー!」

 それでも、嬉しくなって、携帯電話をとりだした。
 先生のお土産のチョコを私の作ったケーキに乗せて、写メを送るために。


 


-終-

2015.2.16頃