閑話休題(140字2話)

・媚びるような視線

気づかないと思っているのかい?
君の視線は僕を通り越して僕の後ろに座る貴婦人を見ているという事に。
まったく。
君におくる貴婦人からの媚びる様な視線の意味が分からないのかね。
あれは僕に何らかの依頼がしたいから、君に仲介してほしいが故の笑顔であると言うのに。
まったく君からは目が離せないね


・指輪をつける

「…そういうわけだから、指輪を貸してくれたまえ」
「…なんだって?ホームズ…」
捜査のために必要なんだと言いくるめ、探偵は親友の指輪を寄越せと手を差し出した。
亡き妻との婚姻の証である、それを。
親友はそれでもブツブツ言いながら
「なくさないでくれよ」
と言って証を外して探偵に手渡す。



・じゃれる

寒い日に寄り添って飲むスコッチは最高だ。
いつもよりも速いペースで進むスコッチに饒舌になり事件の真相を話せば
彼に「素晴らしいよ、ホームズ!」と抱きしめられる。
心地よい彼の腕の中で「息苦しいよ、ワトスン」と口にすれば、
じゃあ僕の酸素を差し上げようと、彼は僕の口を塞いで空気を吹き込んだ
他愛の無いじゃれあい。
僕にとって、紙一重の、触れ合い。
  
2016.1.17