バスタイム〜天才外科医とベビードール…その後


 怪訝そうな顔で受話器を置いた店主に、店員であり妻である彼女は「どうしたの」と声をかける。
「ん?ああ」店主は頭をぽりぽりと掻きながら「いやな」と口を開いた。「昨日、ほれ岬の黒先生のとこのお嬢ちゃんが、電話してきただろう?」
「ああ、ブラックジャック先生の」妻は昨日の会話を思い出しながら「確か、風呂釜の追い炊きが壊れたって、ピノコちゃん半泣きだったわよねえ」
「それがよ」と、店主。「今の電話は黒先生からで、なんか暫く店を休んでほしいって頼まれてよ」
「ええ?」
「それも、休業補償で、月80万は出すっていうんだよ」
「80万!?」
妻は素っ頓狂な悲鳴をあげた。月80万と言えば、月の売上の倍以上だ。
「まあ、それだけだしてくれんなら、なあ」
それでも、腑に落ちないという表情で店主は呟く。「先生は風呂が嫌いなのか?」

「ちぇんちぇい〜どうだったあ?」
少女は電話を終えた天才外科医を見上げて言った。「修理、今日きてくえゆ?」
「ああ、それがなあ」と、天才外科医。「なんか、今日から休みらしい」
「えええ!?じゃあ、今日も追い焚きできないのお?」
「しょうがないじゃないか、休みなんだから」