『ある日曜日』 相変わらず、綺麗な横顔だわと、エララは思う。 整った鼻梁に、澄んだアクアマリンのような明青色の瞳。 一見白髪のようなその髪色は、老人のそれとは違い、豊かで梁がある。 その僅かな癖っ毛が、あちこち跳ねている。今日はいつもよりも多い。まるで彼の心情のよう。 「ねえ」コーヒーカップをゆっくりと置きながら、彼女は言った。「私の話、ドレを聞いていたかしら」 「え、」 声を掛けられて、彼は慌てて向き直る。そして、いつものように笑いながら 「ああ、ごめん。エララさんの声が綺麗だから、聞き惚れてた」 「無関心ねえ」 笑って、エララは「まったく」とケーキにフォークをいれる。「そんなに気になるなら、ついていけばいいじゃない」 「………別に…」彼は言った。「今はエララさんと楽しいデート中だからね」 「話も聞かないくせに?」 笑ってみせる彼の表情。心はココにないのは明らかだ。 珍しく彼が誘いに乗ってきたと思ったら。 「間クンも、楽しくやってるかしらね」 ワザとその名前をだしてみる。一瞬だけ彼の笑いがひきつった。 『日曜日の予定』 「別に聞かれたら不味い内容ってわけじゃ…」 院生の彼は、出来たてアツアツのハンバーグを頬張りながら呟いた。 「じゃあ」ジョルジュは正面から院生を見詰めながら「なんでわざわざ、日本語なんだ」 「俺も彼も日本人だからですよ」 憮然と院生は答える。 最近、留学してきた日本人が、やたらとこの院生に懐いていた。 二人の会話は母国語。ジョルジュには分らない。 だから、なのに。 「とにかく」院生は言った。「明日、塚田さんと出かけますから」 「デートか」 「案内ですよ、あ、ん、な、い!」 「分ってるよ」 分ってる。そう、言い聞かせるしかないだろう。 そう心の中で、呟いた。