破裂音に重なるのは機銃を連続射撃。
爆撃と言うのか。耳にただ響くのは重低音と呼ぶには軽すぎる、肉体を揺さぶるほどの衝撃。
これは音じゃない。衝撃。生命を奪う為に繰り出される、破壊の。
ドドドドドドドド。
ヒュン、ヒュン、ヒュン。
炎に染まる視界は、熱さと絶望で彩られる。
焦がされる思考回路。燃えてゆく同志。
動け、動いてくれ…!
歯を食いしばって、祈る言葉。
言葉?違う、これは最早、執着か。彼らをホームに帰さなければ。
それが、それが、それが。


 全身の熱さに目が覚めた。
 いや、正確には、全身に刻み込まれた傷が持つ熱さだ。
 開く視界が、不自然に狭い。
 狭い?いや開かない?何故。
 一つの可能性。その恐ろしい仮定を確かめる勇気など、今はない。
 ただ、どうして、今自分に意識があるのかが、不思議で悔しかった。
 あたりは静かだ。
 悪夢は終ったのか。
 そして、これは、現実の続き。
 
 生き残ってしまったのか。

 辺りは静かだった。
 一瞬、ここは故郷の山の中だったかと、錯覚させるほど。
 狭い視界には青黒い空が広がっている。
 空?ああ、そうか。俺は仰向けに転がっているのか。
 熱い。熱い。熱い。
 ぼんやりと眺めていると、空が少しずつ明るくなってきた。
 夜明けか。
 夜が明けるのか。
 光が空を染め上げていく。
 なんて美しい光景なのか。

 『俺は船乗りになるんだ!』

 不意に耳に蘇る、幼い少年の声。
 ああ、そう言ったのは誰だっけ。
 
 『船乗りになったら、キリちゃんに会いに行くよ!』

 ああ、そんなことを約束した。
 あれは誰だったか。
 そうだ、こんな美しい朝日を見せてくれた。
 一緒に見た。
 光り輝く美しい夢を語り合った、幼いオトモダチ。
 あれは、あれは、だれだったっけ。

「……クォちゃん……」

声に出してみる。そうだ、そんな名前だった。
元気だろうか、彼は、船乗りになるという夢を現実のものにしたのだろうか。
君の光り輝くその笑顔は、きっと変わらないのだろう。
こんな俺が、君に遭いたいと願ってもいいだろうか。
今の俺は、あの少年時代とはかけ離れすぎて、きっと君には分からないだろう。
でも、俺は、きっと、俺は、君が分かると思う。
美しい夢を抱える君を、俺は見つけ出したい。

君に会いたいと、願っても、いいですか。
その為に、立ち上がっても許されますか。


 
夢の終わり 現実の続き