大好きな君へ

■『声帯を震わす激しい感情・淋しくても死なないうさぎ・指は細く長く、』


 淋しくても生きている。
 うさぎは、淋しいと死んでしまうんだって。
 羨ましくなんかない。
 羨ましくなんか、ない。
 このまま帰ってこなかったら、と思わない。
 大丈夫。留守を守るのは、オクタンの役目だから。
 淋しくなったら、泣けばいい。
 思いっきりなけば、気分はすっきりするんだから。
 だから私は大丈夫。



■『光』『毒』『笑顔』


 今だから、笑い話にだってなる。
 風邪薬と間違えて青酸カリを飲んだ、など。
 今だから言える。
 もし、彼女を助けられなかったら、俺はどうなっていただろう。
 あのまま、薬を摘出てきず、目の前で、彼女が。
 いや、それはない。
 俺は必ず彼女を助け出す。
 今だから言える。
 お粥を作りながら、俺は考えていた。



■『約束』『水薬』『ペナルティ』


 無免許医を拾った。大学病院の駐車場で。
 青白い顔に頬だけが真っ赤だ。
 そして異常発汗と呼吸の乱れ、意識混濁。
 どうやら熱発していたらしい。
 家に持ち帰り、水薬を飲ませる。
 点滴治療を開始する。
 次の日、患者は目を覚まして俺を睨みつけてきた。
「いま、何時だ」
 日付と時間を告げると、患者は力なく額に手を当てた。
「…間に合わなかったか…」
 独り言のように呟くそれは、自宅兼診療所にいる少女へ向けたものだと、用意に想像が出来た。
「なに?デート?」
「いや」患者は言った。「…言い争いになった…昨日中に帰れれば、ピノコの機嫌も直ったと思うんだけどな…」
 きっとペナルティだな。
 患者は呟くと、力なく目を閉じた。




2011.10.2
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