(0話) 終わりから始まる物語など つまらないものかもしれない。 結果が見えている勝負など、 安心して見ていられて、ハラハラすることはない。 スリルもなければ、平凡なことかもしれない。 けれど、 大河ドラマのようにドラマチックに生きたのなら、 少しは振り返ってみることにも 楽しみやロマンを感じることが、あるかもしれない。 だから、 あまり期待しないでほしい。 伝記として遺ることのない人生は 星の数ほどあって これから始まる物語はそんな、 人知れず消えていった星屑の一つなのだ。 それは、 名も無き星のようだが 私達の祈りを遥かな空に届けようとして消えた 小さな流れ星の話なのだと思って欲しい。 とりとめもなく他愛のないものに聞こえるとは思うが 願わくば 秋の桜のように、昼の月のように 誰かに覚えていてほしいのだ 壮大な時の流れの中に瞬いては消えていく 墓標無き骸のように霧散した数多くの者にも それぞれに命があり、生涯があるのだということを どうかあなたには覚えていてほしい。 全て跡形も無くなっても そこに今は目に見えぬ軌跡が確かにあったことを …私の愛を 忘れないで欲しい。 この物語は ただよくある話の 一つだということを 終わりから始まる物語 次頁