(11話) 「クロちゃん、何でころしたのかな。生きたいと思ってたんじゃないかな」 無表情の彼はポツリと呟いた。 「しょうがないよ。すごーい、いたそうだったよ。あのままにしても死んでたよ」 「でも…」 「クロちゃん、血だらけで苦しそうだったじゃない。楽にしてあげたんだよ。 ほんとうはくろちゃんだって分かってるくせに」 「…。」 「それに生きてたらメイワクだよ…。せわをみんなしないといけなくて、そんなに先生もヒマじゃないよ。」 「めいわく…」 「クロちゃんのいる所なんかこの世界のどこにもないんだんだよ、見て」 「…丸いね。」 「くろちゃんはお空にいったんだよ。そう、ウサギだから月だね。家族がいて、 友達のウサギさんとかけっこして元気に遊んでるよ。とってーも幸せな世界なんだ …クロちゃんも行きたがってたよね」 「…うん。」 不自由な少年の車椅子を押しながらの会話だった。 「それに、くろちゃんは小さかったからまっしろなままだよ。生きているとね、 どんどん黒くなっていくの」 「そうかな」 「バラバラで…くろちゃんはあの時死んだ方がよかったんだ、そう思える日がきっと来るよ。 だから、元気を出してね」 それからくろちゃんは よく月を見上げるようになっていった。 「でもおれは生きなきゃいけないんだよ」 白いままのウサギに憧れながら 「くろちゃんに会いたいね、かえってこれるなら」 彼は下手な嘘を呟いたっけ ー00:11 間 黒男 ボトルだと何本分ぐらいだろう? テーブルにはたった一本しかないのに。 長いテーブルごしの会話は徐々に間をつめていた。 「…やっぱり貴様だったのか!」 「え…よく覚えてませんけど、た、た、多分。」 ヒタ… 「悪気はナかったんです…」 「…貴様!!それで許されると思ってるのか!?」 ヒタヒタ 「わわ、私はタダ、助けようと…は、ハハハ!」 「何だとその言い草は!お前さん、命を何だと思っていやがる!」 「し、仕方ないだろ…遅かれ早かれ死ぬときが来るんだっ!今この時だってなッ!!」 医院長の家は資産家だった。 代々政治家や医者を排出した名門であったという。近くには名前のついた大きな会館まであった。 その建物もまた家というよりも文化財といった雰囲気だ。 天井からはシャンデリア。赤を基調とした室内に淡い間接光が壁にいくつか配されている。 大きな窓からは少し高台にあるせいか、郊外ではあるだろうが都会の光がキラキラと輝いて見えていた。 極上のソテー、年代もののワイン。 一人の男が持つ赤はキラリと輝くルビーの目 それを受けたもう一人の男が手に持つ紅い液体は細かく波をうつ。 気の会う二人ではないだろう。何か打算があったはずだ。 それでも始めは和やかな雰囲気だった。 だが、段々と雲行きが怪しくなってきた。 まるで月の光を何かが遮るように 何かが起こりそうな予感がした。 その直後だった 「…今だと…?」 ヒタヒタヒタヒタ 「お、お、お前もどうせシぬんだアッ…」 …シュッ! 「ッ…だ、誰が、、助け……ガッ!!」 シュッ! 「…やめろ……殺すつもり…………ウグッ…!!」 シュッ、シュッ、シュ… ザクッ! 「あ、アク…フグッ!!」 黙レ 里犬 ハハ レ ザクザクザク…ゴボッ…… ピシャ!! ゴボゴボゴボ…… ……誰か 「ガッ…グギッ…ァアアアア!!!」 ……誰か…助け… 「ウルサイ」 ピチャピチャピチャピチャ…ゴクリ ボトルだと何本分ぐらいだろう? テーブルにはたった一本しかないのに。 グラスが割れてしまっては ああ、そうだ、こうやって飲めばいい。 ゴクゴク… 男は口の端を軽くぬぐうと鉄分の臭いが鼻につき、折角のビンテージものなのに 惜しいことだと嘆いた。 「ウマい」 「実に美味い!」 「本日はイチジクの果汁酒になります。」 「うむ…まぁ、トロリと甘い蜜の味には叶わんがな」 舐めるような視線でペットを鑑賞をし、 食前酒をクイッと飲み干すと、モニターに向かって話しかけた。 「また違う品種ですの…お元気そうで何よりですわ」 呆れたような口調が画面の向こうから聞こえる 「何か?するとお前を失った黒男と思い込んでるのか? そんな事が何になるのだ…それで黒男が黄泉がえる訳もないのに …フフフ、お前も面白いだろう?」 …男は例の如くお気に入りの日本人に話しかける。 「フン。クリアーが無くてもこのぐらいの事は出来るのだ。 …波紋が拡がる様子が実に奥ゆかしい。」 手にした食前酒のグラスをクルクルと回すと、クイッと流し込む。 こんなに上機嫌な姿は滅多にない事だ。この状況のすべてを楽しんでいた。 「昔話は愉しかったがお前もそろそろ飽きてきたろう…次の段階に進め」 「少し早いのでは」 「例の件の準備もあるからな…その様子ならもう十分だ…お前が仕事熱心で助かるよ。」 「マスターの仰せのままに。」 「どうかしたの?」 死神は眠そうな、けだるいような、それでいて暖かな目線でごく自然に問い掛けた。 「ピノコに連絡をとったわ」 嘘をつく必要性など今更不要に思えてくる。何故なら 「そう…きっと心配してるね、早く会いに行こう。ほら、そのためにも食べないと」 知ってか知らずか死神は相変わらず呑気なものだ。 「…元気になってね」 穏やかで柔らかな死神の表情。 そんなに私が恋人に似ていたのだろうか。 いや、 …もう生きることを投げているのかもしれない。 「その小百合ってコの話によると、還らずの侍は、医院長だったのね!」 「なぜそう思うの?」 「確か…犯人は二面性があって…つまり院長は普段は甘ちゃんみたいだわ。それ に病院関係者で…外科部長が襲われたホテルも、仮眠室を貸す予定を変えたんだし、一応報告したかもしれないわ」 「そうだね、それ、熱いから気をつけて」 「あなたの恋人はどうして生きてたの?」 「…過去の話だと思って聞いて欲しいんだ…カレー食べながらでいいからね」 外は寒かったからと、鍋にしようか迷ったそうだが「ブラック・ジャックの大好物」とやらを作る事にしたそうだ。 「………フン」 「今までで1番いい反応だ」 死神は面白そうに笑ってみせた。 「この味…どこかで食べた事ある味だわ…なんでかしら?」 「隠し味があるんだよ」 昔…確かにカゲミツと食べた味だ。 「そうやって覚えていられたらよかったんだ…暖かな窓の光を、食卓を囲める人がいたことを。」 「え?」 『ブラック・ジャック!』 男の足元には 赤い、赤い海が広がっている。 横たわるのは瀕死の重傷者。 ここは何処だろうか。 日本の少しばかり豪華な邸宅が、まるで荒野の戦場のような、戦慄を空間に纏わせている。 床だけではない。赤い飛翔が弧を描き出し、どのように切り付けたのかが見てとれる。 窓際に追い詰めたのだろう。トワイライトは真っ赤だ。 室内灯を割って刃物がわりにしたらしい。イビツな切り口でいたぶるように刻ん だのだろう 『……残念だが俺は無事だ。無傷とは言えんが…突っ立ってないで手伝えよ、危篤だ』 『お前、それは…』 『言っとくが正当防衛だぞ』 『そうか、犯人は……やはりそうだったのか』 『何でもいいから手伝え、俺は頭が痛むんだ。手元も…ウッ』 「よく聞いて欲しいんだ。その仮説には無理がある。」 死神は眉間を潜めて少し悲しそうにしてみせる。 「え?貴方の恋人は助からないってこと?」 「…犯人がそんなに捕まらないってことある訳ないのさ …日本は法治国家だから。まぁ抜け目はあるけどね」 「確か…白昼堂々と犯行は行われてるって噂よね」 「そこなんだ。そもそもセキュリティーを見事に打ち破って目撃者はいなくて…的確に犯行を何件も重ねて… 科学捜査の目もあるのに摺り抜けていて…出来過ぎる。 まるでフィクションの怪盗みたいなんだ。」 「つまりどういう事?「還らずの侍」はただの都市伝説みたいなものなの?噂の割に被害者は出てるのに…」 どうにも話が読めない。 生身の人間が、犯罪を繰り返してやり遂げることは私のような部類の人間には可能だ。 でも痕跡が残る。いや、相手も同じく闇に生きていたら、だけれど、一般人がターゲットなら… 「なぁ、捕まるのはどうしてか分かる?」 「バレたから」 「そうじゃなくて…捕まえるのはどうしてか分かる?」 「それは被害者が被害届けを…あっ!」 「そう、出していないんだ。何故だか分かる?」 「弱みを握られているからでしょう?てことは顔見知りなのかしら。でも命に関わるような重傷を負ってたのよね、 外科部長は。いくら脅迫でも命を狙われてたら犯人を…」 その時私は気がついた。 ああ、そうだ。 被害者が命を人質にとられていたのだと 「僕なりに彼を愛してるつもりだ。彼の夢を叶えてあげたいって思ってる。…嘘じゃないよ」 間黒男の生い立ちを辿る時に始めに会った男の事だ。 …パリン! 「壊れ逝くモノってなんでこんなに綺麗に見えるのかなぁ…」 男はさも当然のようにワイングラスを叩き割った。 「ホラ、見て。キラキラ散らばって星の砂みたい。それでいて傷をつける。」 その折れた淵を指先でなぞると、赤い粒が浮き立った。 「くろちゃんが壊れちゃうの…時間の問題だよ。」 「どういう事だ」 「星はね…消える時に『死の吐息』を出すそうだよ。 とっても幻想的で美しいんだけど…ブラックホールが現れるんだ。 吸い寄せられないように気をつけてね」 「…ご忠告ありがとう。」 「ん…おいしい。」 男は染み出した血を味わうようにぺろりと舐めた。 「腐れかけのリンゴはもっと美味しいんだ…君も彼を抱いてみたらいい。クセになる味付けだよ」 男は優雅に微笑んでみせた。 それは、恐怖を覚えるぐらいに「暗黒街の皇太子」に相応しいものだった 「…間黒男に何をした。」 「何って…車椅子のくろちゃんの背中をね、いつも押してあげてたの。」 「幼馴染みなんだよな、あんた」 「そうだよ。僕、親切だからね、くろちゃんにも。」 「どういう意味だ…」 「クロちゃんはね、愛されたかったんだよ。 だから…愛して貰えるような躯にしてあげたんだよ。」 「な…まさか」 「それに、クロちゃんは月の砂漠に行きたがってた。そこは彼にとってのユートピアだったのさ。 この世界に彼の居場所は何処にもなかった。だから僕が…」 「何をしたんだ…!」 「僕がいなくても、自分の力で行けるように、後押ししてあげたんだよ、死神さん。」 「自分で…?」 「君も手伝ってあげれば、本職でしょう」 「白々しい嘘はやめろ…犯人はお前だブラック・ジャック!」 …つまりこういう意味か。 「やはりお前がやったのか」 「何を言ってるんだ。俺は医者だぞ!」 「…信じたくはなかった。」 俺の眼をジッと睨みつけて見極めようとしていたが、瞼を閉じると短くため息を漏らした。 「…見たのか」 瞼を開くと薄ら笑いを浮かべた奴がいた。鋭い眼光を隠そうともしない。 それは、「還らずの侍」という殺人鬼に相応しいものだった。 オペをするような格好をしてスクリと立ち上がるいる。 「…返り血をごまかす為だろ。」 「よくわかったな。外科部長は気を失う前に諭してやったから、貴様の独断で来たのか…」 「ああ。一人で来たよ、お前を止めるためにな…この後の予定はそのまま病院へ 行ってオペをして…お前を嫌う病院は多いから、存在しなかった事にする。 警察はお前のことを口裏を合わせた病院関係者から聞き出せなかった。 それを隠れみのにしたんだ。」 「死神の割にはいい答えだ。 おかげで次々とこなせたぜ。言うことを聞かない奴にはたんまりと金を積んだら 途端に黙り込むのさ」 「なぁ…これに見覚えはないか?」 「さあな」 俺は小百合ちゃんから貰った写真を見せた。 「この少年の名前は間黒男。父親は影三、母親はみおというんだ。お前は間黒男じゃないのか」 俺は1番気になることをきいた。 人が倒れて死にかけているから救わなければならないのに、恐らく間黒男なのだろう…。 あまりの出来事に思考がついていけない。 いや、俺の戦場での経験が、危機的な状況に慣れすぎたせいかもしれない。 場違いな質問だったが、ブラック・ジャックも平然としていた。 「そうだ…迂闊だったな、まさか貴様が子供から聞き出すとは!」 俺は想像していた再会とはあまりにも掛け離れていた。 「間黒男に会いたかった」 「だからどうした。また俺をバラすつもりか…コレのようにな」 「なに?」 ドカッ! 「……」 ほぼ遺体になりかけている医院長は無反応だった。 ブラック・ジャックは事もなげに言い放つと、足元に横たわる医院長を蹴り飛ばす。 「…殺すのか」 「ああ…こいつは特別さ。こいつが母さんを診なければまだ長生きしてたかもしれない」 完全な逆恨みだ。 「今までの被害者も同じか?」 「ああ、そうだよ。間接的でも何でも俺の母の死に関わった奴らを死ぬより怖い 目に合わせてやるんだ。」 「お前…どこまで堕ちる気だ」 「俺は復讐に身を捧げる覚悟だ。悪魔にでも何でも魂は売っぱらってやる」 「分と荒稼ぎしてるなブラック・ジャック…関係者への口止め料だったのか。 身体を売ってまでか?お前は他に何もないのか?」 「ハッ!俺を見てみろ。ご覧の通り身体中傷だらけで顔なんてザックリだ。 髪もこんなだし、見た目だけじゃない。 中身まで男と交わってはぐちゃぐちゃに乱れて、心は復讐でどすグロイのさ。 まともに生きるなんて今更出来る訳がないだろ」 「それはお前が望んだ事なのか」 「そんな訳ない!俺がもしその写真の子供だとしてみろ…比較すること事態に無理 がある。もう戻れないんだよ」 「いや、まだ間に合う。お前は医者じゃないのか」 「ああ。だがな、それ以前にただの人間さ。 極悪犯は見殺しにしたくなることもある。その心に嘘をつかずに正直になっただけだ。 お前だってあるだろ?」 「…否定はしない」 「フフフ…ハハハハッ…死神め…見てろ。次はお前だ!」 『しっかりしろ、小百合…俺が必ず助ける!』 だが、あの姿にも確かに嘘はなかった。 自分自身が誰なのか、どういう人間だったのかを忘れたようだ。 「それと予定は変更した。コイツは特別にこのまま殺してやる」 「正気か?お前…その手に何を持ってるかわからないのか」 「メスだ。商売道具を殺人に使うなんてお前と一緒だな。 …プライドがどうのなんて馬鹿らしいぜ」 血に飢えた目。 冷たく歪む口元。 横たえる人にメスを振り下ろすことにためらいはなく、 返り血を浴びて心底笑っている。 「一度殺しを覚えたら抜けられなくなるぞ…地獄に堕ちる。」 「今更なんだよ。俺にとってはこの20年が地獄だった」 「…経験者の言葉だぞ」 「俺も貴様も似てるかもな。」 痛ましくて堪らない。 地獄のような日々…やはり彼は間黒男なのだ。 『ブラック・ジャック先生、しにがみ先生に似てるよ』 少女の言葉が思い出された。 「俺は医者だが、悪魔と呼ばれてるんだぜ」 似てるのかもしれない。 俺の片目が戻らないように、心に砂漠が広がり続けているように。 俺もあの頃の俺ではない。 「最後の警告だ。」 俺は真っ直ぐと奴に銃口を向けた。 「小百合ちゃんの担当に今のお前はなれるのか。彼女が見たらどう思うんだ」 「…好きにしろ。それでも俺は必ずこいつを殺して逝く」 俺の言葉ではブラック・ジャックには届かない。 少女がこの場所にいたら、止められたかもしれないのに。 ブラック・ジャックはメスを逆手に持って狙いを定めた。 このまま我を失っていくぐらいなら、いっそうのこと俺がこの手で…。 俺は知っている。一度人を手に掛けると、二度と元には戻れない事を。 「分かった、俺が…院長を殺してやる。」 「安楽死か?」 「違う、こういうのは殺人だ…だから引けブラック・ジャック」 「なぁ…何故そこまで俺を止めるんだ」 「間黒男は俺の大切な人なんだ。」 「大切な人?そうか。全く身に覚えはないが、もう何も覚えなくていい」 「何?」 「言っただろう、もう戻れないと」 『手伝ってあげなよ、死神さん』 カチャ… 俺は引き金に手をかけて狙いを定めた。 「…俺は今になって分かったよ。20年前のあの時、死ねば良かったって。あのウサギのように白いままでいられた」 静かに瞳を閉じると今度は、傷ついたような少年のような顔が現れた。 「ほら、殺せよ。最初から居場所なんてなかったんだ」 淋しげな、どこかほうけたような眼で 「俺は…醜く成長したんだ。その写真の中の間黒男はもういない。」 ブラック・ジャックは笑った いつの間にか頬を熱いものが伝っている。 悲しく…笑った 一瞬、 幼い日の写真の結末が浮かんだ。 『たかくて、こわかったよ、きいちゃん、きいちゃん…うあぁあ!』 もう大丈夫だよとくおちゃんが泣き止むまで側にいた。 『きいちゃん、あ…りがと…ヒクッ…』 トントントン… あまりにいっぱい泣きすぎて、止められなくなってしまった涙を拭って、 背中をしばらく叩いたりさすったりしてあげた。 『…わかったよ、おれはめいわくだよね。だから、バイバイするよ』 胸が裂けそうなあの別れの言葉。 『おれ、きいちゃんに頼ってばっかりだもん。だから…』 彼は泣きながら笑ってみせた。 『きいちゃんがいなくても大人になってみせるよ』 もしブラック・ジャックが、間黒男だとしたら、こうなったのは俺のせいだ。 『俺の分もしあわせになってほしいぐらいだよ』 俺がいなかった結果がこれだ。 今のブラック・ジャックを作り出したのは俺かもしれない。 そう思うと後悔せずにはいられなかった。 ただただ悲しくてないと思えていた心が痛くて、痺れるようだった。 そこにわずかな隙が出来た。 それを見逃すような相手ではなかったのに。 「邪魔するなって、次は貴様だと前にも言ったろ…それに…」 いつの間にか胸元から拳銃を手早く取り出した彼は、 俺に向けて既に放っていた。 「死神なんか死ね、ともな」 気が付けば、 俺自身もまたブラック・ジャックの赤い海の中にいた。 エメラルドがかった写真の空もまた夕焼けより朱く、染まっていた。 「20年前俺が死んでいたら良かったのにな… そしたら、貴様が死なずに済んだかもしれない」 次頁