「みおちゃん…とにかく帰りなさい」
「いやです」
普段は頭に天然がつくほど、どこか抜けている彼女だが、意外なことに頑固であった。















 
『彼女が家出をしました-原因編-』













「だって、影三が勝手すぎるんです!」彼女は怒り心頭だ。「仕事命なのは知ってるけど、私との約束を何度も破るんですよ!
このままじゃ、子供が生まれても、嘘つきな父親になっちゃう!」
「ち、ちちおや?」
「私は、影三と家族を作りたいって思っているのに〜!影三のすかぽんたんッ!!」
「…誰が”すかぽんたん”だ」
 ゆらりと現れたのは、どんな脅威のスピードで駆けつけてきたのか、みおが力一杯”すかぽんたん”呼ばわりした、
間 影三、本人であった。
「みお、ドクターに迷惑だ。帰るぞ」
「い、や!」みおは叫ぶ。「影三なんか知らない!私は、ドクターと子どもを育てるもん!」
ばたん。彼女は爆弾発言を投下して、寝室へと篭ってしまった。
「…エド?」
 ゆらり。彼の鳶色が殺気を放ち、エドワードは慌てて首を拘束に振った。
「違う!誤解だ!私は何もしていないッ!」
「まさか、人の恋人を寝取るなんて…」
「ま、まて、まて!私が惚れていたのは、君だ!君の恋人を寝取るわけがないだろう!」
「俺が貴方をふった腹いせにとか」
「私はそんな事はしないッ!神に誓うから、そのメスはしまってくれ!影三!」
 わかりました…憮然としながらも、彼は手にしていた手術器具をポケットにしまう。
「…ケンカの原因はなんなんだ」
 盛大に安堵してから、エドワードは一番気になっていることを聞いてみた。
「まあ、色々ありますが、直接の原因は」
影三は言った。「目玉焼きにソースをかけた事…みたいです」
「………はあ?」
 彼の発言により、エドワードは完全に痴話ケンカに巻き込まれたのだという事実を、知ったのだった。



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