※tui様の素敵エド影キリジャ小説です!!! 前回までのあらすじは↓↓こちらをご覧下さい。 1話(by不良保育士) 2話(tui様) 3話(by不良保育士) 4話(tui様) 5話(by不良保育士) 6話(tui様) 7話(by不良保育士) 8話(by不良保育士) 11話(tui様) 10話(by不良保育士) (13話) ♪〜♪〜♪〜 「むかーち、むかち ネズミしゃんに ご飯をいっぱい食べられて困ってゆ ハメルーンという町があいました。 しょこに笛吹き男たんがやって来て、 「灰色のネズミしゃんを追い払ってやるよ」 って言ったかや そえで、お願いちました。 笛吹き男たんは 楽しい音色を奏でて 笛の音でネズミしゃんを川へ誘って 溺れさせて 「ブクブクブクブク。。」 息が出来なくなったや ネズミしゃんは死んでちまいました。 ネズミしゃんはいなくなりました。 れも、町のみんなは 約束破ったら 絶対だめだかやって 注意したのに、 破ってちまいました。 しょこで怒った 笛吹き男が 笛を吹くと、 子供達が フラフラついていって、 町から子供達が いなくなってちまいました。 ♪〜♪〜♪ 楽しい笛の音色だけが 町には残りまちた」 「ハメルーンの笛吹男か…」 「先生大正解なのよさ!」 「…かわいちょう」 「何がだ」 「灰色のねじゅみさんは死んじゃったんだよ」 「溺死だな」 「もう!たぶん 息がね、とっても苦しかったんじゃないかなとか…」 「死に方にも色々あるが…ピノコ、もっと生きる希望のある本を読め!」 「タイトル、知ってたくちぇに!」 「…子供の頃に少しな」 『ハメルーンの笛吹男』はどこだろうか? 近頃、宗教団体でもないのに妙な連中が相次いで死ぬ。 何の接点もなく、場所もバラバラで、一見、それぞれが自殺したようにしかみえない。 俺は日本に残り、 傷を癒しながら、 情報収集をした。 『悪魔の薬』 俺のお得意さんはこの薬が量産体制に入れば真っ先に、 そんな下らない薬の音色に魅入られてしまうだろう 「先生、子供達もみーんないなくなっちゃったね」 「…ああ」 『昭和の大物政治家自宅風呂で自殺』 『大手自動車輸入メーカー社長飛び降り自殺』 『世界規模の投資フアンド、想定外の破綻』 『医療における人体実験事業議会で容認』 『入院中の男、医者を拉致し病院を抜け出す』 政治家は検察の強制操作にも余裕の態度だった 自動車メーカーはこの不況にも関わらず販売を拡大していた 莫大な資金は不動のものだったはずだ 話題にもならなかったことが国連決議が出るとは そしてミュンヘンのこの患者…俺の患者。 あの人がこんなことをする訳がない 新聞の見出し 俺の周りの妙な出来事。 これらの他にも色んな事が…もう100件近くある。 全く接点のないことを クリップボードに並べてみると …何かが、起きている。 クリアー。 その透明な薬の悪意にきずかぬまま、世界が少しつづ動いていく。 ネジがひとつ、ひとつと足りなくなっていくことに 誰も気付かないまま。 「ねぇ…」 それにしても… 速い。 それにしてもこの手際の良さだ。 俺達の見立てや様々な情報によると、やはりまだ量産とまでは行っていないはずだが… このクリアーの成分の複雑さと合わせて考えてると… 恐らく何年も前から周到に準備されていた計画だ。 自殺、他殺…事件や事故に見せかけたもので被害者を洗うと、小数でも 的確に狙いをつけているとわかる。 「ねえったや…」 「まずいな…」 危険度は調べるほど増すばかりだ。 芸術的ともいえる 完璧な洗脳薬 正直俺達の手には負えない代物だが… 手塚、辰巳、桑田先生、恵、山田野先生… 信頼して頼れる相手はいるが… 普段から拳銃を持ち歩くような俺達のように護身術に長けている訳ではない。 襲われたら一貫の終わりだ。命の保証が出来ない。巻き込む訳にはいかない 『ハメルーンの笛吹男』 その音色に打ち勝つための 俺の躯に宿る唯一の希望 専門外だが、俺がやるしかない。 しかし…これほど何年にも渡って念密に計画されつくしたものの、隙つくとは。 確かおじさんは昔研究員だった。無言で去っていったおじさんは相当なリスクと覚悟で 中枢から免疫を盗むようにして俺に届けたのだろう。 もしくは。 おじさんがこのワクチンを造っていたのだろうか? 極秘に準備された完璧な計画。 複雑怪奇な完璧なな薬。 隙をどうやってついたのか? 何度考えても…俺にワクチンを届いたことは神業としか言いようがない。 笛吹男の音色を邪魔するとは…おじさんはそれ以上の大天才だ。 もしくは…誰かがおじさんに入れ智恵でもしたのだろうか? 誰か…恐らくこのクリアーを作れるぐらいの天才的な頭脳の持ち主なら この奇跡を起こせるのかもしれない。 『ハメルーンの笛吹男』 お前は誰だ。 お前は今どこにいる。 お前はどこに俺達を導くつもりだ? おじさんはどうやって極秘に知ったのか? この洗脳薬を使った完璧な計画の全容に 何処までに気が付いている? 悪魔の薬は徐々に範囲を広げている。 無色透明の空気のように。すぐそばまで。来ているかも知れない 「灰色のネズミ…」 「先生も可哀相だと思うでちょう」 「…ハメルーンの笛吹男に会わなければいいな」 「ん〜れも。みんなが約束破るからいけないんだかや」 ♪〜♪〜♪〜 陽気な音色。お前は誰だ お前の目的は何だ 世界を混沌におとしめて 『ハメルーンの笛吹男』 それを楽しむつもりなのか? お前の正体は未だに知れない。 だが。キリコ、お前は会いにゆくのだろう。 こんな狂った音色で 人々が救われるわけなどないのだ。 お前さんも、俺もこれでも誰より医者であるつもりだ。 この音色を誰かが止めなければならない クリアーの正体を見抜いた医者としての責務だ そう、分かっている。 責務だと しかし余りにも危険過ぎる。 ああ、分かっている。 クリアーの出所を突き止めて止めるしかない だが…会わないでくれたら…早く… 「ねえったら先生!!」 「あ…ああ、何だ?」 「らぁ…先生のオススメのお話教えて」 「…浦島太郎だ」 「ろんなお話?…CMの真似して面倒くさがって、はしょったやダメだかや!!!ちゃーんと話して下ちゃい」 「…ある漁師が」 「あるりょうちが?」 「ある漁師が、亀を助けて竜宮城にいくんだが… 乙姫との宴に飽きて玉手箱をもらって帰郷する… が、自分だけが若いまま、歳をとらずに取り残される …駄目だと言われていたのに蓋を空けると一気に老人になり、 …様変わりしてしまった故郷。 取り留めることは叶わぬ月日は いつの間にか川のように流れ去り、 思いを馳せても 取り返せることなどない。 自分を忘れていた親友達 再開も果たせぬまま先に逝った大切な人… 自宅は愚か両親の墓さえ行方しれず… 肉親に忘れられ、 自身の存在が完全にかき消されていた…それから」 「えっ…そ、そえから?」 「…それから、 どうにもしようがないと漁師は悟ったんだ…。 この世界には始めから 自分の居場所など 何処にもなかったのだと。 行き場を失い 誰もいない海岸に 呆然と佇む漁師…孤独だ 鉛色の空。弾丸のように降る雨 …荒れ狂う冬の海 轟音を轟かせうねる波 潮風が吹きすさぶ黒い嵐の夜。 ただ変わらぬ海鳴りを聞くしか ほかにはなかった… 漁師はただ立っていた… 漁師はただ…漁師は… 漁師は…おしまいだ な?希望のあるいい話だろう」 「…うぅ!!お、おしまい…漁師の人生がおしまいって感じのすゆ…ひどいお話よのさ…うぅ…」 「なんだせっかく。希望溢れる話だろうが!」 「あぅ…ピノコには希望が全然見えないけろ …ろ、ろこに希望があゆの?」 「…とりあえず帰るところだ」 何度となく繰り返す言葉 無傷とは言わない 生きて必ず戻ってこい どんな姿に成り果てても構わない。 …天才外科医がいくらでも治してやる。 だが命は… 「キリコ…早く、早く帰ってこい」 生きて必ず帰れ…キリコ…ハメルーンの笛吹き男 次頁