※tui様の素敵エド影キリジャ小説です!!!
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1話(by不良保育士)
2話(tui様)
3話(by不良保育士)
4話(tui様)
5話(by不良保育士)
6話(tui様)
7話(by不良保育士)
8話(by不良保育士)
11話(tui様)
10話(by不良保育士)
13話(tui様)


(14話)

「本当によろしかったのでしょうか、マスター」 
「ああ」 
女はテロップで流れる「日中、大学内にて教授殺人」の速報を見ながら確認を求める 


「…私なら、もっとスマートに殺れますのに…」 
「お前の実力は知ってる」 
「世間を注目させるようなやり方はマスターらしくありませんわ」 
「そうかね?」 
「ええ。マスターは空気のように…その手は無色透明のままに、相手を赤く染めるのがいつもの流儀ですわ」 
「御褒めの言葉をありがとう」 

「ですが…」 

女はこちらに探るような眼差しを向ける 


「お言葉ですが、マスター。これではこちらが透明人間のままではいられませんわ」 

「ほほう。透明人間か…なかなかいい表現だ」 
「そうと解っておいでの御様子…死に神の件もよろしいのですね」 

「死に神…人間風情が神様気取りか。 
奴の息子は使えないな…近く天罰が下るだろう。」 
「天罰?」 

一連の動き…クリアーに気付く鋭い、優秀過ぎる人間をあぶり出す 

奴が完成させたものの、量産には一時がかかるだろう。 

ジョルジュ…この男のような優秀過ぎる人間はこの計画の危険因子だ。 

扱いづらい人間どもはこのゲームの次のステージのゲートが開く前に消去してしまえ。 


「とっておきのを見せてやろう。それから 
…フェスティバルだ」 
「フェスティバルですって!?」 

俺は傍らの男に話かけた 

「影三、お祭りは好きかい?」 
「ええ…マスターと見に行きたいです」 
「そうだな、楽しげな笛の音色を合図に 
今までに見たこともないほど大きな花火が 
夜空を真っ赤に染める… 
人々の歓喜の声… 
陽気に踊らされて 
いつまでも終わりのない 
フェスティバル。 

この窓からよく見えるように。」 
「マスターと二人…楽しみです」 

「分かるな?」 

女に向き直ると、口に手をあてて考え込んでいる様子だ 
「もちろん。爆発…それも世界にトラウマを与える程の規模… 
悲鳴…逃げ惑う人々…ここから見える範囲内全て…仕掛ける準備が必要ですわ」 

「構わん。綺麗な花火が見たいんだよ、影三と」 

「お二人ですか…存じておりますわ。」 
「何か気になる様子だな?そうだ、この間飼ってたのは死んだのだよ」 

「殺したの間違いでしょう?相変わらず悪趣味ですね、マスター」 
「おだてても、何も出ないぞ」 

影三、悪魔の薬の元凶、この世を混沌におとす 
最も罪深い男 

影三、闇に犯され続ける、この世で地獄を味わう 
最も憐れな男 

影三、頭、躯、骨、血液、精液、唾液、汗、涙… 
そしていずれ心も… 

私の心を揺さぶる、唯一の存在。 

とても愛しく、とても憎い… 



「本当に…殊に最近は気が多いのですね。これも大学内で私が仕事をするのと同じ理由なのでしょうね」 

「さてね。奏でる時は教えてあげよう。 
「陽気な笛の音色ですわね、きっと」 
「そうだ。人々が酔いしれるような楽しい音色だ。 
ただし、得意な曲だが練習しないといけない。」 
「…合図の決め手は何ですの?」 

「…地獄の門が開いた時だ」 
「地獄の門…面白いことをおっしゃいましね、マスター。ではいずれまた…黄泉の国でお会い致しましょう。」 

嬉々とした様子で女は立ち去っていく。 


完成した悪魔の薬。 
この世を地獄に染めることぐらいぞうさない 



「影三、お祭りの起源を知ってるかい?」 
「国によって様々ですが…おおよその傾向では神事…神に祈りを捧げるためのものであったとか…」 
「そう、神に祈りを捧げるんだ。おまじないをする儀式だ。」 
「儀式ですか?」 
「供え物が必要だな」 
フェスティバル…神への儀式。 
我が願いを叶えるための 
最高の舞台を迎える。 


地獄の門を開く儀式。 

祭壇には 

生け贄が必要だ。 


捧げられた憐れな子羊 

滴る体液 
心地よい苦悩の声 
生きながらに少しづつ蝕まれていく子羊が。 

闇に飲まれて 
自ら息が耐えるまでの制裁を 



「マスター…一緒にお祭りに行きたいです」 
「一緒がいいのか」 
「ええ。ずっと」 

あの男は抗体はまだ作りあげていない。 
完成への足掛かりの資料は私も知るところだが、膨大な量があった。奴の頭脳ならそこから完成を導くことは時間の問題だったのだろう。 
だが。 
抗体薬を造っていたことぐらい知っていたが、その資料は一切残されていなかった。 
クリアーの危険性は最もよく知っていたはずだ。 
自分が投薬されることも予測できただろう。 

そうまでしても奴に届ける事を優先させたかったのか。 
己の命さえ落としかねないのに、奴を守ったのか。 
それとも奴から息子に繋げて…まさかお前は 

お前は私に会ってから、他人のために生きていたな 
ただの一度も自分のために生きてはいない。 

…それもあるだろうが、所詮予測の範囲内だ。 



影三は時々夢を見るようになった。 

奴…ジョルジュの治療の効果だろう。 

クリアーを投薬される前の様子をぶつくさと寝言で言う。 

『俺は…大丈夫…で…エド』『エド…苦しまないで…お願い…許し…』 

最近は白昼夢でも見てるのか…ぼうっとした顔で微笑して、意志を示すようになった。 

『ここは…マスターの家ですか…またカレーとお風呂…楽しい…俺の好きな場所に帰ってきたんですね?とても嬉しいです。』 
心から幸せそうに私を喜ばせようと笑ってみせる… 

薬の効果で洗脳された影三は私が奴だと信じている。 
影三は、私の知らない顔をする。 

私を喜ばせると、幸福そうに笑って 
私が怒ると、少しの事でも悲しんで 

いつも私のことを考えている。 

私のために生きている。 



「マスター愛してます、これからも、ずっと」 
「影三…私もだよ」 

影三、愛おしく憎らしい。 

お前は皆と同じに死のうとしたことがあったな… 
一命は何とかとりとめたが… 


『う、そ…ぁ…ぁああ!!』 

ビデオを実際に奴に送り付けたことを告げると途端に… 

奴に操を立てるつもりだったのか… 

お前は舌を 
おもいっきり 
噛んだのだ。 

回復したと思った矢先にカーテンを紐状にして…それからも影三は隙あらば死のうとした。 
刃物…飛び降り…感電… 
首の骨を折る程の怪我をしたり。 
肌色は殆ど見えない。 
真っ白い塊になってしまった。 
ボディーガードを24時間張り付かせ、包帯は取れていったが… 


『死にたいんだ』 
『生きることに疲れた』 


体は日に日に 
痩せてゆく。 
眼からは生気が 
失せてゆく 
やがて拒食症になったのだ。死に至る程の… 

お前の意志は固かった。 

最高医師団を用意したが 
お前の心を変えないかぎり、 
お前は死ぬしかなかった。 

奴を思う気持ち…それを利用することにした。 


『影三。お前が死ぬならば、 

息子をお前の身代わりに。 

あの男をお前の道連れにしよう』 


このたった一言で、お前の目に光が戻った。 

お前は持ち前の強い意志で生きようと必死に努力した。


お前は、あらゆるデータを分析して、自分自身で最良の治療方針を決め、実行しようとした。 

だが。 

その頃にはもう、お前の意志の力など及ばなかった。 

お前は自分自身の心を制御出来なくなっていた。 

幾ら影三が死力を尽くしても体が受け付けない。 
食べても…口を両手塞いでも吐き出してしまう。 
影三が言うには、管で栄養分を補給する方法をとるしか無くなってしまい 
ほぼ寝たきりの状態になってしまった。 
当然成人男性の必要最低限の摂取量には満たない。 
次第に針の痕が増え 
体重は減っていった 

影三を生かす方法など私は知らないのだ。 
影三も私と同じだった。優秀な医者のくせに。 

自分自身を治療することが分からず混乱した。 

強固な意志でも、自分の心をコントロールは出来なかったのだった。 

『食べたい!!生きなきゃいけない!!なのに…どうして…食べたい、食べたいんだ…何で……治療方針は正しいのに何故…』 
『影三…』 
『お願い…します、俺に食べさせて…何でもします。血を吐く程に犯したいのだろう…更なる地獄を味あわせても構わない…俺を生かして…下さい』 
『その言葉を忘れるな影三…』 

私はジョルジュに仕方なく預けた。 

お前の心を治すことなど 
お前は出来なかった。 

影三は嫌がったが、奴は医者でもあった。心身共に回復させるための最後の望みだった 

世界広しと言えども、影三を治す医者は奴以外いない。 

何時もの私なら、人が死ぬぐらい訳もないことだ。 

だが…片時もお前を手放したくはなかった。 

完璧な頭脳、端正な容姿…そしていくら痛めつけても狂わない強い心。 
その全てが私の求めた完璧なもの。 

人間を生かそうと努力したのは生まれて初めだった。 

人間に対して初めて 
生かしたい、 
心からそう思ったのだ。 

影三…お前の死臭ではなく、 
生気をいつまでも味わいたいのだ。 



どんなに奥深く犯しても、お前は決して自分を手放したりはしない。俺に委ねることなど一度たりともなかった。 

お前の力強い意志が、 
放たれる生気が、 
影三。 

躯を貫き 
いくら汚しても 
決して穢ることのない 

美しいままの心が 
私を魅力したのだ 

その心を 
…いつもあの男が 
護っていた。 

お前の胎内の奥の奥…心まで犯せば、今度こそ私のものになるのか。 
今度は奴には邪魔をさせない。 

そう、私の心を動かすのはもう一人いたのだ。 

罪深く、強い意志と才能の持ち主が。 

愛しさは無く、憎しみだけの男が。 

影三の血液を味わっても、肉を焦がし、躯をえぐっても、こびりついた細菌。 
影のように寄り添い、離れぬ男。 
闇に身を染めるほどに、奴の影は濃くなっていった。 

プロジェクトには必要だ。影三を生かすためにも、理解はしている。 

だが憎い。憎い、憎い… 
私の影三の心に宿るお前が。 
憎悪は増すばかり。 


固い意志を持つ 
よく似た天才。 
私にとって 
その存在自体が 
罪深い 
二人の人間 


間影三 

お前には 
更なる愛を 
永遠の愛を 

約束しよう、二人の未来を 

エドワード・ジョルジュ。 
お前には 
更なる罪を。 
死ぬほど重い背徳を。 

私を苦しめた罰を受けるがいい。 


クリアー、 
薬の力を借りずとも、 
私のこの手で 
お前の総てを… 



「この窓からはフェスティバルが良く見えるだろう…花火を見るお前が見たいんだよ」 
「この私が?」 
「そうだよ。花火の光にに染まる影三が見たいんだ」 
「マスター」 
「最中にお前を抱いてやろう」 
「何だかロマンチックですね。 
マスター、嬉しいです」 


影三… 
花火の光り…血飛沫が 
真っ赤に 
お前の全身を染める 

瞳は息子と同じ色 
躯は私と同じ色に… 


影三…完璧な薬を生み出した頭脳。犯し尽くした躯。 
影三…その全てが私のためもの。 


影三…一度でいいから血に染まったお前を犯してみたい。 


全身を真っ赤に染めたお前の味わいたい。 

最高級のワインのように、私を満たしてくれるはずだ。 

想像しただけで高揚とする。 
美味しい酒に酔うように。影三の躯に酔っていた 


心配せずとも程なく料理は運ばれてくる。 

このフルコースは極めてスムーズに進行している 



「…影三お前の心をいずれ味あわせておくれ」 
「ええ、心ゆくまで」 

心まで犯されたその時、お前はどんな顔をする。 

絶望感に満ちた顔か 
それとも 
喪失感から表情さえ失うのか 

余りに深い傷に、死ぬ気力さえ沸かないほどに。 

そんなお前を抱いてやろう。 
壊れるほどの快楽を与えながら。 
いや、あの男に抱かせてみるのも案外面白いかもしれない…考えは尽きない 

躯だけでななく 
心まで堕ちたお前は 
どんな反応をするのだろう? 

影三。 
私のために死ぬのではなく 
私のために生かしてみたい。 

影三。 
あの男ではなく 
この私に、 
その心を差し出すのだ。 

それは私に捧げられた供物。 
影三の全てを手にしたその時は… 



「まずは、子羊のムニエルを奴が味付けをしてくれる…お前にも少し分けてあげるよ」 
「美味しそうですね。 
ありがとうございます、 
マスター」 




誰も 
堕ちることなど 
心配しなくてよくなる。 

何故なら 
ここが 
これから 
地獄になるのだ 

そして私は… 


「さて、前菜を頂くとしよう」 


人間どもよ、 
私の空腹を 
満たしておくれ 





透明人間現る
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